ヤーミン・チーパオ の シルクロード 

  会社辞めた組夫婦のユーラシア横断滞在記

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ロシア入国
2月6日、17時40分。リトアニアの首都ヴィリニュスを出発した列車は、ラトビアを通過し、夜中0時半頃、ロシアに入った。車内での入国審査は和やかに終わった。国境にはおよそ似つかわしくない化粧ばっちりの美人審査官がセクシーポーズで(実際はふつうの格好だったが)入国スタンプを押してくれた。続いて、荷物チェック。この係員は昔は美人だったかもしれないが、今はぷっくら太ってしまったおばあちゃん。バックパックの鍵をあけ、中身を取り出してみせる。おばあちゃんは甲高いかわいい声で二言、三言いったが、よくわからないので、ニコニコしてみる。どうやらOKのようだ。荷物を片付け、また鍵をかける。

2月7日、8時半。サンクトペテルブルグについた。かなり寒い。-20℃ぐらいだろうか。フィンランドまで列車で数時間らしいから、かなり北まで来たことになる。駅から地下鉄に乗って、おめあてのHostelへ。

Hostelでの事件
9時半、チェックインをして、誰もいない8人用ドミトリーに入る。11時頃、部屋でくつろいでいると、カップルがチェックインしてきた。スロヴァキア人で彼女の方は流暢に英語を話す。2、3日、ここを観光するそうだ。

12時、お腹が空いてきたので、出かけることにした。ドミトリーに泊まる時には必ずやってきたように、鍵をかけたままのバックパック2つをワイヤー付の南京錠でベッドに固定して、部屋を出た。

22時前に帰ってきて、22時半頃、シャワーを浴びるため、洗面用具を出そうとした。その時、気づいた。なんと、バックパックのウワブタを開けたところの上部がパックリ破れているではないか!!!
オーノー!!!8年目に入った我が相棒の寿命か!?最初はそう思った。だが、次の瞬間、そうではないとわかった。バックパックの中身の位置がまったく違うのだ。
『やられた!』
心臓の鼓動が60回/分から180回/分に上がる。志保はナースだからこの数字は確かだ。急いで、中身をチェック。現金は一切入れてなかったことを思い出して、鼓動は180回/分から120回/分に下がる。が、依然バクバク状態。
『トラベラーズチェック500ドルと80000円、無事であります。
寝袋、CDウォークマン、水タバコ、カロリーメイトにイカ飯、すべて無事であります。』
辰巳二等兵になったような気分で、テキパキと志保隊長に報告する。ふぅ~、一息つく。
ん、志保のバックパックは???
うぉー、同じくやられてる。しかし、中身はすべて無事。
すぐに同室のスロヴァキア人カップルにこのことを言う。
『荷物大丈夫?誰かが私たちのバックパックを切って荷物をあさったみたい。ホラ、こんなふうにされてる。』
『え~、なんてこと。』そういって彼らも荷物をチェックしだした。
『大丈夫、なにも取られてないわ。貴重品はレセプションに預けてたから、バックパックには鍵もかけずに、荷物もほらこのとおり、散らかしっぱなし。あなたたちの荷物には鍵がかかってたから大事なものが入ってるって思ったんじゃないかしら?』

う~ん、なるほど。

すべて荷物は無事。
どうやらキャッシュだけを狙った犯行のようだ。ということは犯人は内部の者(従業員か客)だろう。外部の者なら金目のものはすべて持っていく。そのために入ってくるんだろうから。内部のものならキャッシュ以外のものを盗むのは、持っているだけで犯人とわかるので危険だ。そんなことはしない。また、おかしなことに犯人はあさった後の荷物をきれいに詰めなおし、外見上はそっくりそのままであった。

とにかくレセプションに報告して、部屋へ連れてきた。
『4年間こんなことは1度もなかった。』
そういいながら、彼女は動揺して顔が引きつってしまった。続いて彼女は、
『12時にあなたたち(俺らふたり)が出て、12時半に彼ら(スロヴァキア人カップル)が出てから、この部屋には絶対だれも入っていない。』
と言った。
スロヴァキアの女の人が『掃除のスタッフはどうなの?』と聞いた。
『確かに彼女は全室の鍵を持っているけど。。。でも4年間ずっとここで働いてるし、そんなことは絶対ない。』
レセプションの彼女は気が遠くなるようなおぼろげな眼をしてそう言った。Hostelに対する責任感の強い人のようでショックが大きいみたいだ。

思い出
なにも盗られてなかったのは幸運だったが、大事な大事なバックパックが切られてしまった。二つとも缶詰を開けるようにして、半円状に60センチほど切られてる。

これではもう使えないではないか!7年以上もの間、一緒に旅してきた相棒の傷口が痛々しい。

1999年、大学4年の頃、密かにひとり旅を計画していた僕は、梅田のGAREにあるアウトドアショップMont-Bellでこいつと出会った。たくさんあるバックパックの中からこいつを選んだのは、シンプルで使いやすそうだったし、青一色というのが『地球の色』みたいでいいんじゃないのと思ったからだ。7年間、いろんな国をこいつと一緒に歩いた。うれしい時も悲しい時も、暑い所も寒い所も、臭い所もそうでない所も。バックパックはただのカバンとは違う。こいつを背負えばどこへでも行ける。バックパックに残されたシミや汚れや傷の一つ一つが思い出なんだ。

はっ、かっこいいこといっちゃった。

うたがい
昔、僕はタイ南部からバンコクへいく長距離バスで、荷物入れに預けていたバックパックの中を荒され200ドルを盗られたことがある。そのときは、鍵をかけていなかった自分が悪かったと反省し、勉強になった。

海外ではドミトリーというベッドがたくさんある共同部屋に泊まることが多いが、ドミでは外出するときに、面倒臭くても必ず荷物をしまって、バックパックに鍵をかけ、ふたつのバックパックをつないで、さらにそれをベッドや棚に固定するようにしている。この旅では9ヶ月半、ずっとそうしてきた。

もちろん何かを盗られては困るからなのだが、それ以上に『人を疑いたくない』という理由が大きい。何かが無くなればどうしても疑ってしまう。
同じ部屋でフレンドリーに話していた旅行者も宿のスタッフも掃除のおばちゃんもトイレで隣にいるやつも廊下ですれ違うやつもみんなみんな怪しくみえてしまう。はぁ嫌だ嫌だ。やから鍵かけてたのに。切り裂かれてはどうしようもない。気持ち悪いモヤモヤが頭に充満する。
普段寝る時は、枕の下に引いているパスポートや財布なんかも、今夜ばかりは身につけたまま寝る。おやすみなさい。

あやしいアメリカ人
次の日、2月8日はバックパックごとレセプションに預けて外出した。夜8時頃帰ってくると8つのベッドのうち6つが埋まっていた。2つは俺ら、2つはスロヴァキア人カップル、あと2つは、1つがもの静かなロシア人で、もう1つがあやしいアメリカ人だった。"あやしい"と書いたのは、事件のことを話した時の返しが奇妙だったからだ。
『昨日の12時半から21時ぐらいの間に誰かが俺らのバックパックを切った。』
『おれは昨日の17時半ごろこの宿にきて、このベッドでずっと寝てた。おれがきたとき、この荷物(スロヴァキア人の荷物)はあったが、きみたち(俺ら)の荷物はなかった。』
ん?昨日???何を言っているんだ???
絶対こいつはいなかった。俺らは1時ごろ寝たが、この部屋には絶対4人しかいなかった。もしかして、この男は一度この部屋にきたが、そのあと別の部屋にいって、昨夜は別の部屋で寝たのであろうか?
なんかあやしい。
それに昨日、俺らのバックパックは切られはしたが、ベッドに固定していたので、ずっとこの部屋にあったはずだ。何を言っているんだ、この男は。

とナーバスになっている俺らは、警戒心を一気に高めた。が、すぐに杞憂であるとわかった。彼は、サンフランシスコから飛行機できたため、ものすごい時差があり、今日が何日の何時かよくわかっていなかったのだ。おまけに天然なようだ。彼が昨日の17時半といったのは、今日の17時半だった。それならば納得がいく。俺らの荷物はレセプションにあったから、この部屋にはなかった。
やれやれ、お騒がせなやつだ。

余計な一言
この日の夜、スロヴァキアの女の人が、俺に小声でこう言ってきた。
『今日、私もやられたわ。枕の下に置いてあったTシャツが盗まれたの。誰かがこの部屋の鍵を持ってるのよ。』
『Tシャツ???』
疑いは確信に変わった。犯人は多弁になるものなんだな。
Tシャツなんて盗むはずがない。俺らのバックパックの中にはもうちょっと金になるものが入っていたし、この女のTシャツなら昨日も盗れた。それに警戒心の高まっている部屋に二日連続で入ってくる馬鹿はいない。黙っておけばいいものを、余計な一言を口走ったものだ。この二人を犯人と考えると、この二人のいろんなおかしな点に納得がいく。

1.事件のことを言った時に、『え~、なんてこと!』といいながらも、自分たちの荷物はほとんどチェックしなかった。普通ならもっと必死でチェックするだろうに。

2.事件の日の夜、寝る前に俺が着替えて、貴重品ポーチを腰に巻いたのをみて、彼女が彼氏にジェスチャーで『あの日本人は腰にお金を巻いていたのよ!』みたいなことを言っていた。
(その時は考えすぎかなとも思ったのだが。。。)

3.事件の次の日、彼らは前日と同じように荷物を広げっぱなしで平気で外出していった。貴重品はないにしても寝袋や化粧品は高価なはずだ。気味の悪い事件の次の日なんだから、レセプションに預けていくのが当然だと思うのだが。
しかも、事件の日、レセプションの彼女が、俺ら4人に対して、荷物はレセプションに預けて外出するように忠告したばかりなのに。

4.荷物をあさったあと外見をそっくりそのまま元通りにしたのも、第一発見者になりたくなかったからであろう。あの日、俺らと、スロヴァキア人カップルのどちらが先に帰ってくるかはわからなかったが、散らかしっぱなしにしてた方が自然だったろうと、今は思う。

この部屋の窓から外をみてみると、この宿の出口から出て行った人が、地下鉄の駅の方へ歩いて行くのがよく見える。あの日、12時に外出した俺たちはこの窓から見張られていたに違いない。

いきどおり
次の日、スロヴァキア人カップルは出て行った。僕らは何も言わなかった。指紋検証でもすれば、逮捕できるのだろうが、何も盗られていないのに、腐敗したロシア警察に頼む気にはなれない。

あのカップルにとって僕たちは『間抜けな日本人』で終わったかもしれない。そのことについて憤りは感じる。何も言わなかったのがよかったのかどうかはわからない。何か言って、一波乱起こした方が、こっちの気持ちがすっきりしたかもしれない。でも、僕たちはそうしなかった。『あいつらはいつか痛い目に会う』そう思うことで自分たちを慰めた。
イランであった人が言っていたことをふと思い出した。
『いいことをすれば、いいことがあるし、悪いことをすれば、悪いことが降りかかる。』
僕も、ホステル内では禁止されている飲酒をして、その後すぐにスネをぶつけて内出血した。うむ、自業自得。

同室のアメリカ人マークにだけ、犯人がスロヴァキア人カップルであることを話した。事件後、マークも外出時にはわざわざバックパックをレセプションに預けていたのだ。
『マーク、もう大丈夫よ。犯人は出て行ったから。もちろん普通の注意は必要だけどね。』

Good job
"バックパックのその後"だが、このままシベリア鉄道に乗るわけにはいかないので、携帯用裁縫道具で傷口を縫うことにした。お互い自分のバックパックの手術に取り掛かる。意外と裁縫は得意なのだ。2日かかって60センチの傷口を塞いだ。最初は黒い糸を使っていたのだが、足りなくなって、黄色、水色、緑色、赤色とカラフルな縫い目になった。

ひっぱったりしてみる。おぅ、いけてる!丈夫じゃん!
これなら今後も使える。
『おぅ、よかったな~、おまえ(バックパック)』
と、相棒を抱きしめる。

宿を出る時、マークが俺のバックパックの傷口を触りながら、こう言ってくれた。
『よう縫えてるやん。グッドジョブやね。』

この一言が事件をほんのり柔らかく終わらせてくれた。
ありがとう、マーク。



[Photo701]おぉ友よ
2006/02;サンクトペテルブルグ
筒型のバックパックの上部が切り開かれる。
が、今は得意の裁縫で修復完了。色とりどりの糸が傷口をふさぐ。
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[Photo702]聖堂
2006/02;サンクトペテルブルグ
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[Photo703]街並み
2006/02;サンクトペテルブルグ
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[Photo704]足なが~
2006/02;サンクトペテルブルグ
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[Photo705]運河も凍る
2006/02;サンクトペテルブルグ
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[Photo706]お菓子みたい
2006/02;サンクトペテルブルグ
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[Photo707]絶対溶けないもんね、-20度
2006/02;サンクトペテルブルグ
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[Photo708]Elmitaje
2006/02;サンクトペテルブルグ
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